「急な病気やけがなどで治療を受けたが、健康保険証を持っていなかったので医療費全額を自費で支払った」そのようなとき、加入している健康保険の窓口で申請すると、健康保険適用が認められ自腹で支払った金額の一部が返ってくることがあります。
正確には標準額(健康保険を使って治療した場合に保険機関から医療機関に支払われる治療費)から本来の自己負担分(サラリーマンなら3割など)を差し引いた金額が給付されます。
また、保険診療をしない医療機関などで治療を受け医療費全額を支払った場合でも、そうせざるを得ない事情がありその事情が認められれば、健康保険の給付を受けられる場合もあります。
これらの申請に何が必要になるか、政管健保の例で見てみましょう。
- 健康保険療養費支給申請書(立替払、治療用装具、生血)
本人あるいは代理人が記入します。給付金が振り込まれる銀行口座など送金先の記入が必要です。医師による記入が必要な箇所はありません。
健康保険療養費支給申請書:社会保険庁
- 領収書あるいは領収明細書
治療を受けた医療機関が発行したものです。 - 領収(診療)明細書
所定の様式で記入しますが、治療を受けた医療機関の医師の確認と捺印が必要です。治療を受けた医療機関が遠い場合は、電話やメールなどで治療の事実を確認し、送付先や費用などを尋ねて郵送で記入をお願いしましょう。
領収(診療)明細書:社会保険庁
- 保険証、印鑑
これを参考にして、自分が加入している健康保険組合の窓口で相談してください。
日本の医療保険制度である健康保険は、海外では使えません。そのため、海外の医療機関で治療を受ける際、その医療費は自腹で支払うことになります。しかし、国内で健康保険の適用になる治療については、帰国後加入している健康保険組合の窓口で給付申請すると、日本での標準額から自己負担分を差し引いた金額が戻ってきます。
もし、その国で支払った金額が標準額より少ない場合には、標準額ではなくその国で支払った金額から自己負担分を差し引いた金額が給付されます。申請は、医療費を払った翌日から2年間可能です。
申請になにが必要か、こちらも協会けんぽ(旧政管健保)を例に見てみましょう。
- 健康保険療養費支給申請書(立替払、治療用装具、生血)
上記と同様 - 診療内容明細書
Attending Physician's Statement - 領収明細書
Itemized receipt - 保険証、印鑑
日本で行う場合の医療費を算定するので、領収明細だけでなく診療明細が必要になります。言葉の問題もあるので、「2」「3」については日本語訳(翻訳者の氏名、住所を明記)も必要です。
海外旅行や海外滞在をするときには、日本語と英語を併記した申請用紙を用意しておき、現地でそれを見せて相談するとよいでしょう。
そこで、海外に行く前に加入している保険組合に「2」「3」に使用できる英語併記の指定書式があるか確認し、あるようなら前もって入手しておきましょう。また、ない場合にはあらかじめ英語訳を作っておくか、流用できる他の組合や自治体の書式がないか探してみましょう。
治療した医師が、療養上必要とした治療用装具(コルセット、義肢、靴など)を使用した場合、その代金は高額医療費には組み込まれません。しかし、治療用装具の制作業者から請求された費用の一部を、健康保険が給付する制度があります。
業者の領収書と医師の意見書(同意書)・装着証明書、健康保険療養費支給申請書を用意して、加入している保険組合の窓口で申請します。ここでも、標準額から自己負担分を差し引いた金額が給付されます。また、それぞれの保険組合あるいは地域(県、市、町、村など)による独自の補助制度がある場合もあります。
輸血は、病状に合わせて医師や本人(家族)の判断(同意)の上で行われます。支払いが高額になることも多い治療ですが、高額医療費には組み込まれていません。ですが、領収書と医師の輸血証明書を付けて療養費支給申請をすると、標準額のから自己負担分を差し引いた金額が給付されます。
支払いまでに数カ月かかることもあるので、経済的に苦しい場合には、一時貸し付けなどの制度を持っている保険組合もあるので相談してみましょう。
国家資格をもつ施術師による、はり、灸、マッサージ、接骨などは、医師の同意などの条件をみたすと健康保険が適用される場合があります。そこで、施術をお願いするときには「保険適用が可能か」「その場合費用的にメリットはあるのか」「どういった手続きが必要か」といったことを、前もって相談しましょう。
柔道整復師の場合などは、保険証をもっていくと自己負担分の支払いで簡単に済んでしまうこともある一方で、医師の同意(書)が必要なこともあります。
このように、その場の支払いが本来の自己負担分だけといったケースと違い、まず自費で全額を支払った後、健康保険の給付申請をするケースもあります。原則標準額から自己負担分を引いた金額ですが、審査のうえ給付金額を決める保険組合もあります。
ただし注意しておきたいのは、民間資格による施術に対しては健康保険の適用がないことです。