飛蚊症と書いて「ヒブンショウ」と読む。
ある朝目覚めたら、目のなかをムシが飛び交っていた。二つか三つ、右の目玉を動かすと、つれて前後左右に揺れて流れた。最初は、ムシが目に飛び込んできたのかと思い水洗いをしたり、目薬を垂らしてみたりした。
それでもムシは入ったままで、とうとう諦めて眼科へと足を運んだところ、網膜裂孔と診断された。網膜が裂けた際、液状のものが眼球のなかに溢れ出てきたものらしい。ピストルの形状をした器具を直接目に押しあて、レーザー光線を数十回照射して裂けた周辺を焼きつけ、裂孔は一段落した。
しかし、飛蚊の症状はそのまま右目に残った。ようやく目のまえの邪魔者にも慣れてきた頃、生涯付き合うさだめと納得し、目のなかの邪魔者に「飛蚊のブンちゃん」と呼び名を与えた。
続いて、「耳鳴りのプチくん」なるものがやってきた。耳のずっと奥まったところで、間をおいてはプチプチとなにかが弾けている。かぼそい音ながら、確かにプチプチいっている。
何年も耳鳴りに悩まされてきた友人のK君が、涼しげな顔つきで「今だって鳴っているよ」などと、すっかり音に慣れてしまっていることを思い出し、気には障るものの医者への相談は行かず終いとなった。ブンちゃんに続いて、プチくんと名づけたことが多少なりとも気を楽にさせており、今では半分身内と考え諦めている。
最近、右脇腹の上っ面の一点に針で刺すような痛みが走ることがある。ほんの一瞬であるが、連続して四、五回繰り返す。たいそう痛い。痛みがきた瞬間、反射的に飛び上がってしまう。
半分やけっぱちで「チクリちゃん」と命名した。実際にはズキンとくる痛みで、適切ではないかもしれないが、呼びにくいのでチクリに決めた。チクリちゃんは、忘れかけた頃を見はからい突然襲ってくる。
ほどなく古希となる。「ブンちゃん、プチくん、チクリちゃん」のほか同類同筋が、これからも増えるであろう。無論、歓迎できるものではないが拒む手立てもない。向こうから勝手に押しかけ身内であることを勝手に宣言する。付かず離れずでやっていくしかない。「ほどほどに仲良く頼むよ」と挨拶し、迎えることにしている。






飛蚊のブンちゃん

都道府県別の健康リスク更新(5/ 18)







