しかし、ひと昔前に「かぜとインフルエンザは違います」というフレーズを使った厚生労働省による広報活動が盛んに行われたことをご記憶の方もいらっしゃるのではないかと思います。本来はインフルエンザもかぜの一種なのに、なぜこのようなフレーズが使われたのかというと、インフルエンザは他のかぜ症候群と異なり、感染・流行しやすく、発病すると人によっては深刻な事態になるケースがあるからです。‘かぜ’というと、軽い病気の代表のようなイメージがありますが「インフルエンザに限っては、そんなに軽視はできない」というメッセージが、このフレーズに込められていたのでしょう。
インフルエンザに感染すると、1-2日程度の潜伏期間を経た後、急に高熱が出ます。そして関節痛や筋肉痛、頭痛、下痢、食欲低下、鼻水、鼻づまりなど、全身に症状が現れます。ただし、健康な人が発病した場合は2-3日で熱が下がり、その他の症状も1週間から10日程度で治まります。
注意が必要なのは子どもと高齢者、そしてなにかの持病がある方です。子どもはウイルスに対する抗体がない状態での初感染になるので重症になりやすいですし、高齢者は抵抗力が低下しているためインフルエンザが治る前にほかの細菌やウイルスに二次感染してしまいやすいのです。また、持病(例えば心臓病や糖尿病、喘息、慢性閉塞性肺疾患など)があると、その病状が急に悪化することがあります。
これらが該当する方は、インフルエンザと思われる発熱などの症状を軽視せず、すぐに医療機関を受診してください。ご存じのようにインフルエンザには治療薬があり、それによって解熱までの期間を短くでき、二次感染や周囲の人への感染の確率も低くすることができます。


子どもや高齢者、持病のある方、そしてそのご家族は、できるだけ予防接種を受けてください。予防接種を受けてから抗体ができるまで少し時間がかかるので、流行シーズンの少し前、具体的には11月中に受けておくとよいでしょう。
このほか、感染の機会を減らすために、流行シーズンにはなるべく人込みの中を出歩かない、うがいをこまめにする、マスクを着用する、手をこまめに洗う――などのセルフメディケーションが役立ちます。室内を加湿するのもよいでしょう。乾燥しているとウイルスが喉の奥まで簡単に入り込んで、感染しやすくなります。
インフルエンザにかかってしまった場合の治療には、ウイルスの増殖を抑制する薬が有効です。薬に加えて、保温と安静、十分な水分補給を心掛けてください。通常は2日ほどで熱が下がりますが、もし熱が下がらなかったり、一度下がった熱がぶりかえしたら、二次感染の可能性もあるので、すぐに受診してください。
なお、熱が下がったあともしばらくインフルエンザウイルスが体内にとどまり、その間は周囲の人に感染させる可能性があります。インフルエンザの流行拡大を防ぐために、解熱後も2日間ぐらいは外出を控えるようにしましょう。
最後に新型インフルエンザについて簡単に触れておきます。新型インフルエンザは文字通り、これまで存在したことのない新型のインフルエンザウイルスです。これまで存在したことがないのですから、人類のだれもが抗体を持っていません。ですから、いったん感染すると重症になりやすく、また、流行し始めると歯止めがきかずに一気に大流行すると考えられます。
現在、本来は鳥しか感染しないトリインフルエンザウイルスが、人間の間でも容易に感染するように変異し、新型インフルエンザとして拡大する可能性が危惧されています。これに対して、世界中の行政機関や医学研究者が対策を急いでいます。
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